浄水場で検出問題 ホルムアルデヒドって何?
利根川・江戸川水系の浄水場の水道水から水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出されました。
この問題を受け、19日、浄水場の取水制限は埼玉、千葉、群馬3県の計5カ所に及び、千葉県では
午後6時半時点で5市計34万4000世帯が断水しました。
20日現在、千葉県全市で給水が再開された模様です。
Q.ところで、この騒ぎになっているホルムアルデヒドとは一体何なのでしょうか?
A.ホルムアルデヒドは常温では無色透明で、刺激臭がある気体です。
水に溶けやすく、水溶液は「ホルマリン」と呼ばれます。
ホルマリンは、生物の標本腐敗を防ぐために使われているので
聞きなじみがあるのではないでしょうか。。
ホルムアルデヒドは、いろいろな物質と簡単に結合する性質を持ち、その特性を生かして
プラスチックや塗料、接着剤など幅広い製品の原料になります。
また、有機物の燃焼で発生することもあり、森林火災で放出されることがあるほか、
車の排ガスや、なんと、たばこの煙にも含まれている物質なのです。
Q.ところで、ホルムアルデヒドは、人間の体に悪いものなの?
A.高濃度の気体では、、目や鼻、呼吸器に刺激を与え、涙やせきの原因になることがあります。
また、長期間にわたって吸い込んでしまうと発がん性のリスクがあります。
さらに、「シックハウス症候群」としてよく耳にする、新築住居等での、目の痛みや頭痛、
呼吸困難などを発症させる原因は、住宅建材の接着剤に含まれる
ホルムアルデヒドが原因物質のひとつとされています。
Q.え?そんな物質が水道水に入っていても飲んで大丈夫なんですか?
A.世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインでは、ホルムアルデヒドを1リットル中0・9ミリグラム以下と定め、
これを含む水を1日2リットル、何十年間飲み続けても「明らかな発がん性はない」とされています。
日本の厚生労働省では、2003年にWHOのガイドラインを基にさらに約10倍近くも厳しい水質基準
として、1リットル当たり0・08ミリグラム以下と策定しています。
健康局水道課によると、「基準値を超えた水を仮に3、4日飲んだとしても健康に影響はない」そうです。
Q.どうして、浄水場の水道水に混入することがあるのですか?
A.ホルムアルデヒドは、アミン類と呼ばれる物質が、浄水場で消毒用に添加される
塩素と反応すると発生してしまいます。
実は、今回国の基準値の2倍にあたる0.168mgが検出された埼玉県行田浄水場では、
2003年11月にも検出されたことがあります。
その際の原因は、上流にある埼玉県内の化学工場から流れ出た有機物質が、
浄水場で塩素と反応したことによるものでした。
今回、当時と同様、ホルムアルデヒドの発生原因とされた工場周辺も調べられましたが、
無関係だったようです。
残念ながら現時点では、まだホルムアルデヒドの発生原因がつかめていないとのこと。
ホルムアルデヒドになる化学物質はヘキサメチレンテトラミン以外にも数百種類以上存在しています。
さらに年間1トン以上の指定化学物質を扱う事業所は国への届け出義務がありますが、
1トン未満の事業所が多数を占めており、自治体側が大半を把握していないことが原因物質の特定を
困難にしてしまっています。
龍谷大学の竺文彦教授(環境工学)によると、「工場から排出された化学物質か、
浄水場でたまたま一気に増えて濾過(ろか)しきれなかった植物プランクトンなどの有機物が
塩素と反応した可能性が高い」と指摘しています。
(平成24年5月21日)