中世の竹製導水管
2009年11月19日(木) 読売新聞
(記事抜粋)
国指定特別史跡の一乗谷朝倉氏遺跡(福井市城戸ノ内町)で県教委が進めていた調査で、16世紀中頃の武家屋敷跡から、竹を利用した導水管が出土した。同遺跡資料館によると、導水管の出土例としては県内最古。近くのため池から屋敷に水を引くために敷設されたとみられ、同資料館は「江戸時代以降の福井城下では水道施設が発達していたが、それ以前にも水を引く技術があったことを示す貴重な発見。上水道の原型ともいえるのでは」としている。
調査は、同遺跡南側の、一乗谷川右岸に広がる武家屋敷跡とみられる地域約2500平方メートルが対象。調査期間は4月から12月10日まで。
同資料館によると、導水管は地表から約5センチの地中から出土。確認できた長さは約1・2メートルで、直径約7センチ。導水管の南東約20メートルにはため池があることから、この池から屋敷まで水を引くために使ったとみられる。
さらに屋敷跡では、水を引いた先とみられる石積遺構(幅約2・7メートル、奥行き約2メートル、深さ約1メートル)も確認。遺構では足場として使われていたとみられる板(長さ約1・8メートル、幅約30センチ、厚さ約1・5センチ)が3枚重なった状態で見つかった。同資料館の櫛部正典文化財調査員は「洗い場として使われていた可能性が高い」としている。
屋敷跡とため池との間には遊歩道が整備されており、今後は遊歩道の部分も調査し、導水管の全容を解明する予定という。
国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)の小野正敏教授(中世考古学)は「一乗谷朝倉氏遺跡では、ほとんどの屋敷で井戸が見つかっており、導水管の出土は別の取水方法があったことを示している。今後の調査で分水した跡が見つかるなどして当時のインフラ研究につながればおもしろい」と話している。