水道水を見直そう(下)
産経ニュース 2008年10月9日(木)
(抜粋記事)
水道水を見直そう(下)環境・家計に優しい (1/2ページ)
■欧米でも進むボトル水離れ
「自宅でコーヒーをいれるときは必ずフランス産のミネラルウオーターを使っています。水道水よりも、なんとなくおいしく感じるんです」
こう話すのは埼玉県に住む会社員の男性(50)。この男性が自宅や職場で飲むボトル水代は、月額1万円ほどになるという。
男性のように、普段から水の「味」にこだわり、コーヒーや紅茶、料理などにボトル水を利用する人は少なくない。 日本ミネラルウォーター協会によると、平成19年の国内生産量と輸入量は計約250万キロリットルに上り、10年前の約3倍に増加。 国民1人が年平均20リットルを飲んでいる計算だ。
だが、その価格は水道水の500倍から1000倍。1リットル100円から200円程度が一般的で、 なかにはガソリンや牛乳より高価なボトル水も珍しくない。
ボトル水はまた、環境に与える負荷が意外なほど大きく、水道技術研究センターの試算では、石油からペットボトルを製造し、 国内産地から輸送する場合のエネルギー消費量は、水道水の約700倍。フランスや米国など海外から運ばれる水は、二酸化炭素(CO2) 排出量、エネルギー使用とも一層多くなる。
すでに欧米各国では環境対策として、"蛇口回帰"を呼びかける動きが活発だ。米サンフランシスコでは昨年から、 官庁でのボトル水の購入を禁止。今年2月には、ロンドンのケン・リビングストン市長(当時)が 「安くておいしく環境にも優しい水道水を飲もう」と市民に訴えかけた。
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地球温暖化を背景に水道水への関心が高まるなか、 国内各地の水道局もその復権に力を入れる。東京都水道局では、 都内のマンションやビルにある約22万カ所の貯水槽を無料で点検する事業を展開。「高度浄水処理でおいしい水を供給しても、 貯水槽の管理状態が悪ければ、水質劣化や汚れの原因にもなりかねない」と筧(かけひ)直(すなお)調査課長は指摘する。
また貯水槽や配管に問題がなくても、殺菌消毒のために添加される塩素でカルキ臭がすることも。日本水道協会の西野二郎水質課長は、 水道水をおいしく飲む方法として、(1)水を10~15度に冷やす(2)ビタミンCが豊富なレモンなどを入れて塩素臭をなくす(3) 朝一番に使う水(水道管に長時間滞留した水)は掃除などの雑用水に使う-と提案する。
物価高の今、環境にも家計にも優しい水道水をもう一度見直してみたい。
(中曽根聖子)