老朽化水道管 遅れる対策
朝日新聞 2008年4月8日(火)
(抜粋記事)
10年後、4割が更新期
上水道管の老朽化が進んでいる。全国で約60万キロが敷かれているが、厚生労働省によると10年後には、 法廷耐用年数を超える管が全体の4割に及ぶ。高度成長期以降の右肩上がりの新設とは異なる「更新」は、 水道事業者にとって初めての経験だ。しかし、その費用を賄えるのかどうか。大きな壁が目の前にある。
大規模断水が相次ぐ
「歩道に大量の水があふれている」。宮城県大和町役場に昨年11月下旬、こんな連絡が入った。 現場は住宅や病院が近い町東部の県道。町には「水が出ない」という問合せも相次いだ。水圧低下などで周辺の約1千戸が断水。調べると、 地下の直径45センチの鋼管に長さ1.5メートルにわたって亀裂が入っていた。給水車の配車なども含め、復旧に700万円かかった。 上水道管が敷かれたのは76年。町は経年劣化による破損と判断した。町上下水道課は「これほどの大規模断水は初めて。 口径の大きな管ほど、被害が大きく出てしまう」と話す。町は08年度に急きょ、新幹線沿いを中心に管調査費として1,600万円、 更新などの工事費として3,200万円を予算付けした。
ここ数年、老朽化が原因と見られる断水事故が目立ち始めている。昨年だけでも新潟県村上市や岡山市などで大規模な事故が起きた。 厚労省によると、断水が100戸を超えるなどの大規模な事故は07年に少なくとも19件あり、14件が老朽化が原因とみられる。
実はその厚労省に過去の正確な事故データはない。07年度から、大規模な事例の提出を全国の水道事業者に求め始めたばかりだ。 「老朽化対策は、まず実態把握から」と厚労省担当者。対策が後手にまわったかたちだ。
国内の上水道は延べ約60万キロ。高度成長期以降、急ピッチで敷設が進んだ。厚労省の推定では、法廷耐用年数を超えた管は現在、 全体の2割弱を占める。2020年には4割近くになるという。老朽管は確実に増え続ける。
費用工面手付かず
北九州市は07年度に、更新を目的とした「基金」を設けた。毎年更新しているが、将来の大量更新をにらみ、 毎年5億円をプールする。「更新できるのは、給水人口と収入が潤沢なためだ」とし水道局経営企画課の竹下誠次主査は話す。 東京都水道局も積立金を新設した。07年度から年50億円を積み立てている。
しかし、全国に上水道事業者は約1,600あるが、多くは手付かずの状態だ。大阪府泉佐野市。00~05年度は赤字。 累積赤字は6億円にのぼる。視水道公務課の宗野公保計画係長は「現状は病院や住宅密集地付近などを優先させ、細々と更新するしかない。 料金値上げも難しい。国が新たな補助制度を作ってくれれば」と話す。全国の事業者でつくる日本水道協会は厚労省に、 ごく一部しか対象としていない補助金制度を拡充することなどを要望している。
法的耐用年数
上水道は、常に満水で圧力がかかった状態で水を送るため、下水道よりも強度が求められる。法廷耐用年数は、 その効用が持続する期間とされ、国や水道事業者は寿命の目安ととらえている。地方公営企業法の施行規則で、 排水池から家庭や工場まで送る「配水管」を40年と定めている。