世界の海水をろ過
工業化と人口増加が進む中国や、原油高で潤う中東などで、海水を原料とした造水向上の建設が増えています。国連開発計画の
「人間開発報告書2006」によると、現在、世界の43ヶ国の約7億人が水不足で不自由を強いられているそうです。
水不足が世界的に深刻化するなか、日本メーカーの技術が問題解決に一役買っている、そんな記事が掲載されいたのでご紹介いたします。
朝日新聞 2007年9月11日
(抜粋記事)
日本企業がシェア5割
「数年前まで水道が使えるのは3日に1日。今は改善したが、毎日6時間止まる。」北アフリカ・ アルジェリアの駐日公使アブデルラニ・シェリアフさん(46)は母国の水事情の厳しさを訴える。
同国は雨が少ないうえに水道インフラも不完全なため、政府が03年から海水淡水化施設の建設を始めた。 地中海沿いの人口90万人の都市ベニサフでは100万人分以上にあたる日量20万立方メートルの飲み水をつくる施設の建設が進む。 来年稼動の予定だ。「ほかにも10以上の計画がある」という。
その施設の心臓部が、海水をこし、真水にする高機能ろ過膜「逆浸透膜」。製造・販売したのは日東電工と子会社のハイドロネーティクスだ。
この膜は、厚さ0.2マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)の合成プラスチックの層に、 肉眼では見えない穴が無数に開き、水分子だけを通す。海水の塩分を世界最高の99.8%、微細な有機物や発がん性物質は完全に取り除く。新市場中国では廃水も
海水を淡水化する方法としては、以前は熱して水分だけ取り出す蒸発法が主流だった。 世界でもっとも淡水化施設が多い中近東では火力発電所と併設した施設が多い。石油で発電し、その熱や電力で海水を蒸留する工場だ。
蒸発法では、維持管理が簡単で電力コストが安い利点があった。だが涼しい時期や夜間は発電量を抑えるため、 造水量も連動して減ってしまう。00年前後からは、技術が進みコストが下がった濾過膜方式の採用が増えた。
淡水化用の濾過膜はもともと米国生まれ。日本では工場廃水などの公害対策で開発が始まり、70年代に引き合いが増えた。
しかし対策が一巡すると需要が激減し、日東電工では事業撤退もささやかれた。2度目の絶頂や80年代の半導体活況期。 半導体製造過程で必要な不純物ゼロの「超純水」をつくる膜が売れた。
そして今、世界的な水需要の高まりを受け3度目の成長期を迎えた。新市場として注目を集めているのは中国だ。
10%前後の経済成長を続けるには毎年新たに日量400万立方メートルの水が必要とされ、「海水淡水化だけでなく、 廃水を再利用する分野で需要が相当拡大してくる」とみられている。
中国は廃水の水質汚染が深刻なため、日東電工は過酷な使用条件にたえる中国専用膜も開発。