世界自然遺産 小笠原諸島
去る6月24日、小笠原諸島が世界自然遺産に登録されました。
小笠原諸島は都心から約1,000キロ南の太平洋上にある大小30余りの島々から形成されています。
公共の交通機関は船のみで、竹芝桟橋からフェリーで25.5時間を要します。
登録の理由について、世界遺産委員会は
「 小笠原諸島の生態系は多くの固有の種に加え、
アジア各地の植物が集まっており、幅広い進化の
過程を示している 」
として、その生態系の豊かさを高く評価しました。
現在は父島、母島合わせて約2,300人の方が暮らしており、
美しい海や緑溢れる自然に魅せられ年間約17,000人の観光客が訪れますが、
1830年まで定住者はいませんでした。
海洋島である小笠原諸島は、どの島も大陸と陸続きになったことがありません。
小笠原の生物は鳥に運ばれたり、海流や風に流されたり、流木に付着したりして
島に辿り着き、島の環境に適応し、生き残った子孫です。
隔離された自然の中で独自の進化を遂げ固有種となったものもいます。
陸産貝類は106種生息しているうちの100種、植物は441種のうちの161種、
昆虫は1380種のうちの379種が固有種という非常に高い固有種率を誇っています。
今も尚、進化の過程を目の当たりにすることができるので、
小笠原は『進化の実験場』と言われています。
また絶滅率が低い事、生息状況の良さも評価されました。
一方、人間を初めとする様々な動植物の侵入によりいくつかの固有種の絶滅や
生態系の撹乱の危機に瀕しています。
自然を守る取り組みとして具体的には、
固有種であるアカガシラカラスバトやアホウドリ類、オガサワラシジミや
オガサワラアオイトトンボなどの保護、
グリーンアノールというトカゲやアカギやギンネムなどの外来植物の駆除、
人によって持ち込まれ野生化したヤギやネコの捕獲
などが行われています。
今後は観光客の増加が見込まれますが、それに伴い更なる自然への影響が懸念されます。
新たな外来種の侵入を防ぐため小笠原諸島を訪れる際には、知らず知らずのうちに
生物を運んでしまわないよう、ひとりひとり注意することが必要です。