ウミガメの産卵
生涯のほとんどを海の中で過ごすウミガメが、陸上の地を踏むのは孵化時と産卵時のみです。雌のカメは、砂浜に穴を掘り、
約100個の卵を産みます。穴の中の卵は周囲の砂の水分を吸収しながら成長します。よって水分量、塩分量が適切な砂でないと発育できません。
発育可能な温度は約24度から33度で、29度を境にそれより高いと雌、低いと雄と性別が決まってしまいます。
こうして約2ヵ月後、十分成長した子ガメは卵の殻を破り、深い穴の中に誕生します。しかし、体長約4センチの子ガメは、
1匹では穴の外に出ることはできません。同時に何十匹も生まれた子ガメたちが一斉にもがくことにより、やがて砂の天井が崩れ、
地上へ這い上がる事ができるのです。この間数日から1週間。ここで息絶えてしまうものもいます。
もし、産卵場所が人の足や車により踏み固められていたらどうでしょう。
夜を待ち、地上へ顔を出した子ガメたちは海を
目指します。何故海がわかるのでしょうか?
子ガメは明るい方へ向かう習性がある為、暗い
山側ではなく、紫外線が反射する明るい海へ
向かうのです。この際、海より明るい街灯(青い
光への反応が強いそうです)があれば、子ガメ
は迷ってしまいます。
また、砂浜のゴミ、車の轍、人間の足跡等も体
調約4センチの子ガメが海へ向かう際の越えら
れない障害となります。海へたどり着けないま
まもたもたしている子ガメは、体が乾燥してしま
ったり、体力を消耗してしまい弱ってしまったり、
夜が明け、他の動物に食べられてしまったりします。無事に海へ辿り着いた子ガメは波に乗って沖へ向かいます。
ここでも鳥や大型の魚に食べられてしまう危険があります。
日本で生まれた子ガメは黒潮に乗り、遠くメキシコまで旅立った記録があるそうです。
生き残った子ガメたちは海中で成体となるまで過ごします。
そして今度は親ガメとなり、産卵の為に砂浜に上陸するのです。
因みにウミガメの産卵というと、涙を流しながら頑張っているシーンが浮かびますが、あの涙は痛いとか苦しいとか悲しいからではなく、
単に体内に溜まった余分な塩分を排出しているだけだそうです。海に生息する爬虫類や鳥類には塩類腺という器官があります。
ウミガメの塩類腺は目の上にある為、涙の様に見えるのです。
ウミガメ7種のうち現在日本では5種類のウミガメが観察されています。
その中で国内の砂浜で産卵をするのはアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種です。
ウミガメは、自分の生まれた場所に戻ってきてそこで産卵をする母岸回帰という習性があるそうです。
せっかく戻ってきたのに産卵場所が無くなっていた・・・・などという事のない様、砂浜を維持する事は私たち人間の役割ではないでしょうか。