癒しの水音 ~水琴窟(すいきんくつ)~
江戸時代初期、茶人であり、作庭家でもあった小堀遠州は、
蹲(つくばい)や手水鉢(ちょうずばち)廻りの排水設備として、
洞水門を発明しました。
この洞水門が起源であるという説もある水琴窟は、
江戸中期に庭師が考案したといわれる日本庭園における
造園技術の最高峰のひとつです。
その構造は、底に小さな穴を開けた甕(かめ)を逆さに埋め、甕底に水が溜まり、水滴が落ちると甕の中で音が反響する仕組みです。
ある時、良い音がする事に気付いた庭師が、
甕を変え、廻りの土砂を変え、
微妙な音の変化を楽しむというほんの遊び心から
生まれたものが水琴窟です。
水琴窟の音を水琴音といい、
読んで字のごとく琴に似た音を響かせますが、
水琴窟という名称はいつ誰がつけたものか定か
ではありません。
通常、地下に埋っている水琴窟・・・。
排水を美しい音色に変えてしまう発想力・・・。
見えない所に粋で繊細な先人たちの心意気がつまっていると思いませんか。
しかしながら、その技法は秘伝とされ、また、排水方法は自然排水が一般的な為、
時と共に土砂がつまり音が出なくなり、戦後はほとんど忘れられた存在となってしまいました。
そんな水琴窟再ブレイクのきっかけは1959年東京農業大学の平山教授による論文でした。
当時全国で確認できた水琴窟は2箇所のみ。残念ながらどちらも音を聞くことはできませんでした。
その後、朝日新聞にて報じられ、さらにNHKにて全国放映され、大きな反響を呼びました。
現在では、デザインも多様化し、室内設置タイプや、音響設備を整えより聞こえ易くしたタイプなど水琴窟も日々進化している様です。
また、水琴窟を使ったコンサートが開催されたり、水琴音を録音したCDもある様です。
日々忙しい現代を生きる皆さん、時には立ち止まって水琴音に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
探してみると意外と家の近くにあるかもしれませんね。